外耳炎 ~おウチのワンちゃんは毎年起きていませんか?~

 こんにちは!獣医師の橋本です。
 
最近暑い日が続いてきましたね!梅雨になり、高温多湿な時期は人にも動物にとっても過ごしづらい日が続きます。
 ところで、ワンちゃんにとってこの時期に起こりやすい病気があります。
 それは「外耳炎」です!
 外耳炎は意外と多くのワンちゃんに見られており、実はお家のワンちゃんが外耳炎になっているかもしれません。
 
 
外耳炎のサインって?
実は前から外耳炎になっていたけれど気づかなかった・・・、ということは意外とあります。ワンちゃんは喋って教えてくれないので、外耳炎になる子はどういったサインがあるかを知っておく必要があります。
  1. 耳を後ろ足で掻く
  2. 頭を床や物にこする
  3. 頭を振る
  4. 耳垢がたまる
といったサインがあります。①だと外耳炎を疑うご家族は多いですが、②と③の場合だと癖でよくやっていると思って見逃していることがあるので、ご注意を!
ただ、外耳炎だけなら掻かないようにしていれば「自然に治るから病院に来なくてもいいのでは?と思う方もいらっしゃると思います。
実は、外耳炎単体で起きることはなく、他の皮膚トラブルがあるかもしれません。
 
 
外耳炎の原因って?
実は外耳炎が単体で起こることは少なく、何かしらの皮膚トラブルが根本にあることがあります。「細菌」、「耳垢」、「高温多湿」が外耳炎を直接引き起こすものと思われる方もいますが、実はそういうわけではありません! 
まず、外耳炎を直接引き起こす原因として…
  1. アレルギー
  2. 異物(草、コバエなど)
  3. 外部寄生虫(主にミミダニ)
  4. 脂漏症
  5. 甲状腺機能低下症
などがあります。
特に両耳を慢性的に痒がる子の場合は、9割以上が「アレルギー」絡みと言われています。
その為、「細菌」、「耳垢」、「高温多湿」は、外耳炎の根本的な原因ではなく、外耳炎の悪化又は発症のリスクをあげるもので、一回発症してしまった外耳炎は「対症療法+原因の除去」をしないと、慢性化または再発する可能性が非常に高いです。
 
 
治療方法って?
まず、行っていく治療は…
  1. 外耳炎を悪化させる原因の除去(主に耳掃除)
  2. 現在起きている炎症を抑える
  3. 再発の防止
  4. 外耳炎を引き起こした原因の除去
まず、最初の治療に重要なポイントは①と②です。
①は、主に「耳掃除」がメインになります。外耳炎の悪化には細菌やマラセチアという真菌もかかわると言われていますが、耳垢がそれらの増殖に大きくかかわっています。その為、抗菌薬や抗真菌薬を使わず、耳掃除をすることで耳の環境を整える必要があります。
しかし、基本的には自宅で耳掃除は行わないようにしてください。中途半端な耳掃除、洗浄液の残留、耳道壁の損傷は外耳炎の増悪に繋がりますのでご注意ください。
②は、点耳薬を用いることで炎症を抑えます。1日1回の点耳薬や1週間に1回の点耳薬があるのでその子に合った薬を処方します。
③では、①と②で抑えた外耳炎を再発するまでの期間を延ばすことが必要です。これは「プロアクティブ治療」といって、人でも用いられている治療方法です。点耳の頻度を減らして行う方法で、ワンちゃんのかゆみによる負担やご家族の点耳の負担やワンちゃんとご家族の病院に来る負担を減らすことができます。
④も、①と②で症状を抑えた後に行っていきます。初発で他の皮膚症状が出ていない子は③を行うことが少ないですが、耳以外に体を掻く子や慢性経過の子、再発する子には行っていきます。詳しい治療方法は、その原因によって様々ですが、もしご自宅のワンちゃんが繰り返し耳を気にする場合は一度ご相談ください!
 
 
外耳炎は発症すると、症状が目に見えやすい病気ですが、他の皮膚の病気と比べて皮膚の状態までは分かりづらいです。
そこで当院では、「ビデオオトスコープ」という機械を導入しています。この機械では、「耳道内洗浄」や「異物の除去」、「腫瘤の切除」ができます。そして、ご家族にもワンちゃんの耳の中の状態を知ってもらうことで、現状や治療経過を獣医師とご家族の間との認識の共有ができることに優れています。





実際にビデオオトスコープで撮った写真です。

 

外耳炎になった時の痒みはワンちゃんのQOL低下につながるため、ご家族の気づきがQOL向上につながります。
もし、耳の状態が少しでも気になる方がいらっしゃいましたら、お気軽にご来院ください